「Java EEシステムの開発環境を今すぐ最新のJava EE 6に変えるのは難しいが、システムの稼働環境だけでもJava EE 6対応アプリケーション・サーバに移行し、最新技術の恩恵を手軽に受けられないか」――そうしたニーズに応えるために先ごろ日本オラクルが提供を開始したのが、「Java EE 6マイグレーション・コンサルティングサービス」だ。これはJava EEの旧バージョンで作られたシステムを、Java EE 6に対応したWebLogic Server 12cやGlassFish 3.x上に移行するのを支援するサービスである。同サービスの企画/提供を担当する日本オラクルの大橋勝之氏に、サービス提供の背景やサービスの概要、利用メリットなどを聞いた。(沙倉芽生)
Java EEがエンタープライズ・システム開発の中核技術として普及して十余年。国内では、まだJ2EE 1.4などJava EEの旧バージョンと商用/オープンソースなどの外部フレームワークを組み合わせて作られたシステムが多く稼働しているが、Java EEがバージョン5で大きく方針転換し、開発容易性や拡張性に重きを置いて発展していく中で、それら旧Java EEベースのシステムは大きく取り残されようとしている。
すでに当初の開発担当者も現場を去り、設計の詳細を把握した者が不在なまま、半ば塩漬け状態になっているシステムも少なくないだろう。運用や保守のコストを考えると、最新のJava EE環境にアップグレードするのが望ましいのに、下手に手を入れられないまま旧式のJava EE環境を使い続けざるをえないというジレンマ。旧式のシステムがビジネスの足かせにもなりかねない現在、「この状態をどうにかしたい」と考える方は少なくないだろう。
そんなシステム担当者の悩みを解消すべく、日本オラクルが提供を開始したのがJava EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスである。
「本来なら、アプリケーションも含め、旧式のJava EEシステムのアーキテクチャを刷新して最新のJava EE技術に基づくアーキテクチャに作り替えるのが理想であり、日本オラクルではそれを支援するコンサルティング・サービスを提供しています。それに対して、Java EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスは、古いアプリケーションには基本的に手を入れず、そのまま最新のJava EE 6環境に移行して稼働させるのを支援するというサービスです」と説明するのは、同サービスの企画/提供を主導する大橋勝之氏(コンサルティングサービス統括 テクノロジーソリューションコンサルティング統括本部 クラウド&ITソリューションコンサルティング本部 ソリューションマネージャー)だ。
「『移行』と聞くと、大規模な作り替えをイメージするかもしれませんが、Java EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスではコードの改修を必要最小限に抑えることで、比較的、容易に旧Java EE環境から最新のJava EE 6環境に移行できます。Java EE 6に対応したアプリケーション・サーバに稼働環境を変えるだけでも大きなメリットが得られるので、まずはそのメリットを手軽に実感していただこうというのが狙いの1つです」(大橋氏)
「最大のメリットはパフォーマンス向上です。近年はJava仮想マシン(JVM)の性能向上が著しく、これを最新のものにバージョンアップするだけでも、実行性能を大幅に高めることができる可能性があります」と大橋氏。最新のプラットフォームはマルチコア対応や64ビット対応が進んでいるので、サーバ・リソースもより有効に活用できるようになるという。
さらに、WebLogic Server 12cに移行すれば、同サーバに備わる「JRockit Flight Recorder」など、先進の運用管理技術も利用できるようになる。「障害対応などが容易になり、運用負担も軽減できるので、そうした観点からも最新のJava EE 6環境への移行を強くお勧めしています」と大橋氏は語る。
「私たちは、サン時代から“Write Once, Run Anywhere”というコンセプトの下、特定の製品に依存しないプラットフォーム・ニュートラルなアーキテクチャを強く意識してコンサルティング・サービスを提供してきました。その基本姿勢は現在も変わ��ていません」(大橋氏)
大橋氏自身も、サン時代に大手電力会社の全社共通基盤となるフレームワークや、SIerがサービス提供で用いるフレームワークなど、Java EEによる大規模なシステム構築基盤の開発支援を数多く手掛けてきた。Java EEコンサルティング・サービスの強みを、大橋氏は次のように説明する。
「最大の強みは、Javaの発展の方向性やロードマップを正しく理解し、それらを踏まえた最善の提案をできることです。私たちは常に、Javaテクノロジーの最新の動向を追いながら、それをお客様のビジネス課題の解決にどう役立てるかを考えてきました」
そうした経験/ノウハウをサン時代から引き続き提供しているわけだが、オラクルとして提供するようになったことで、サービスの内容や質に変化は生じたのだろうか?
「コンサルティング部隊に、Javaのエキスパートに加えて、オラクル製品のエキスパートが加わりました。つまり、Java EEに関する最新のベスト・プラクティスに加えて、世界中の企業で利用されているオラクルの各種製品を活用したベスト・プラクティスも提供できるようになったわけです。オラクル製品の過去の導入経験も生かしてインプリメンテーションの支援までできるようになったことが、サン時代と比べて最も強化された点でしょう」(大橋氏)
「2000年代前半、J2EEと組み合わせて使うオープンソースや商用のフレームワーク、あるいはエンドユーザーやSIerが自ら開発した独自のフレームワークが多数登場しました。多くの企業が、それらのフレームワークを使ってシステムを構築しましたが、現在ではフレームワークのサポート期限が切れたり、あるいは開発そのものが停止してしまったりしているものが少なくありません」(大橋氏)
そうして身動きがとれない状況に陥った企業のシステムを、まずはそのまま最新のJava EE 6環境に移行させることで、先進技術による恩恵を得られるようにするのがJava EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスである。同サービスには、将来、開発基盤も含め全面的に移行する前に、最新のJava EE環境に馴染んでおけるというメリットもある。後編では、同サービスの具体的な内容を紹介しよう。
旧Java EEシステムを“塩漬け”にするなら、稼働環境だけでも最新に!

日本オラクル コンサルティングサービス統括 テクノロジーソリューションコンサルティング統括本部 クラウド&ITソリューションコンサルティング本部 ソリューションマネージャーの大橋勝之氏
すでに当初の開発担当者も現場を去り、設計の詳細を把握した者が不在なまま、半ば塩漬け状態になっているシステムも少なくないだろう。運用や保守のコストを考えると、最新のJava EE環境にアップグレードするのが望ましいのに、下手に手を入れられないまま旧式のJava EE環境を使い続けざるをえないというジレンマ。旧式のシステムがビジネスの足かせにもなりかねない現在、「この状態をどうにかしたい」と考える方は少なくないだろう。
そんなシステム担当者の悩みを解消すべく、日本オラクルが提供を開始したのがJava EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスである。
「本来なら、アプリケーションも含め、旧式のJava EEシステムのアーキテクチャを刷新して最新のJava EE技術に基づくアーキテクチャに作り替えるのが理想であり、日本オラクルではそれを支援するコンサルティング・サービスを提供しています。それに対して、Java EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスは、古いアプリケーションには基本的に手を入れず、そのまま最新のJava EE 6環境に移行して稼働させるのを支援するというサービスです」と説明するのは、同サービスの企画/提供を主導する大橋勝之氏(コンサルティングサービス統括 テクノロジーソリューションコンサルティング統括本部 クラウド&ITソリューションコンサルティング本部 ソリューションマネージャー)だ。
「『移行』と聞くと、大規模な作り替えをイメージするかもしれませんが、Java EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスではコードの改修を必要最小限に抑えることで、比較的、容易に旧Java EE環境から最新のJava EE 6環境に移行できます。Java EE 6に対応したアプリケーション・サーバに稼働環境を変えるだけでも大きなメリットが得られるので、まずはそのメリットを手軽に実感していただこうというのが狙いの1つです」(大橋氏)
最新の稼働環境に移行するメリットとは?
大橋氏が話すように、Java EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスは、旧Java EEベースのシステムを“そのまま”最新のJava EE 6環境で動作させるというものだが、稼働環境を最新のものに変えるだけで享受できるメリットとは何なのだろうか?「最大のメリットはパフォーマンス向上です。近年はJava仮想マシン(JVM)の性能向上が著しく、これを最新のものにバージョンアップするだけでも、実行性能を大幅に高めることができる可能性があります」と大橋氏。最新のプラットフォームはマルチコア対応や64ビット対応が進んでいるので、サーバ・リソースもより有効に活用できるようになるという。
さらに、WebLogic Server 12cに移行すれば、同サーバに備わる「JRockit Flight Recorder」など、先進の運用管理技術も利用できるようになる。「障害対応などが容易になり、運用負担も軽減できるので、そうした観点からも最新のJava EE 6環境への移行を強くお勧めしています」と大橋氏は語る。
サン時代からの先進Java EEノウハウと、オラクルのインプリメンテーション・ノウハウが合体
ところで、今やソフトウェア製品だけでなくハードウェア製品まで提供するようになったオラクルが、Java EEに関して中立的なコンサルティング・サービスを提供していることは、あまり知られていないかもしれない。実はこのサービスは、サン・マイクロシステムズ時代から提供しているものである。「私たちは、サン時代から“Write Once, Run Anywhere”というコンセプトの下、特定の製品に依存しないプラットフォーム・ニュートラルなアーキテクチャを強く意識してコンサルティング・サービスを提供してきました。その基本姿勢は現在も変わ��ていません」(大橋氏)
オラクルのJavaコンサルティング・サービスの特色
大橋氏自身も、サン時代に大手電力会社の全社共通基盤となるフレームワークや、SIerがサービス提供で用いるフレームワークなど、Java EEによる大規模なシステム構築基盤の開発支援を数多く手掛けてきた。Java EEコンサルティング・サービスの強みを、大橋氏は次のように説明する。
「最大の強みは、Javaの発展の方向性やロードマップを正しく理解し、それらを踏まえた最善の提案をできることです。私たちは常に、Javaテクノロジーの最新の動向を追いながら、それをお客様のビジネス課題の解決にどう役立てるかを考えてきました」
そうした経験/ノウハウをサン時代から引き続き提供しているわけだが、オラクルとして提供するようになったことで、サービスの内容や質に変化は生じたのだろうか?
「コンサルティング部隊に、Javaのエキスパートに加えて、オラクル製品のエキスパートが加わりました。つまり、Java EEに関する最新のベスト・プラクティスに加えて、世界中の企業で利用されているオラクルの各種製品を活用したベスト・プラクティスも提供できるようになったわけです。オラクル製品の過去の導入経験も生かしてインプリメンテーションの支援までできるようになったことが、サン時代と比べて最も強化された点でしょう」(大橋氏)
最新のJava EE 6にいち早く馴染む機会としても活用できる
「『旧式のJava EEシステムは塩漬けにするしかない』と諦めている企業には、ぜひJava EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスを使っていただきたい」と大橋氏は訴える。実際に、J2EE 1.3やJ2EE 1.4などで構築したシステムを多く抱える企業から相談を寄せられるケースが多いという。「2000年代前半、J2EEと組み合わせて使うオープンソースや商用のフレームワーク、あるいはエンドユーザーやSIerが自ら開発した独自のフレームワークが多数登場しました。多くの企業が、それらのフレームワークを使ってシステムを構築しましたが、現在ではフレームワークのサポート期限が切れたり、あるいは開発そのものが停止してしまったりしているものが少なくありません」(大橋氏)
そうして身動きがとれない状況に陥った企業のシステムを、まずはそのまま最新のJava EE 6環境に移行させることで、先進技術による恩恵を得られるようにするのがJava EE 6マイグレーション・コンサルティングサービスである。同サービスには、将来、開発基盤も含め全面的に移行する前に、最新のJava EE環境に馴染んでおけるというメリットもある。後編では、同サービスの具体的な内容を紹介しよう。